5. 最上の薬

「最上の薬」とは?

「最上の薬」とは、どんな薬でしょうか? 

もちろん、普通の「薬」ではありません。

実は、どこの薬局にも売っていません。

病院で処方箋を書くことはできます。

しかし、院内薬局でも院外薬局でも決して入手することができない「薬」です。

 

とんちのようですが、この「薬」とはいったい何でしょうか?

「最上の薬」=「運動」

「最上の薬」は、「運動」のことです。

 

運動が体に良いことは良く知られています。

ですが、最近の研究から、「運動」は「脳」や「精神」にも良い影響を与えることがわかってきました。

もっというと、「脳への効果が確認されている唯一の薬」が、「運動」です。

 

具体的には、「子供は運動することにより賢くなり、成績が上がる」ということが学術的に証明されました。

そしてこの結果をもとに、アメリカの一部は学校教育を変えています。

「運動」の副作用

「運動」には大きな利点があります。

それは、「副作用がほぼない」ということです。

 

全ての薬には副作用があります。

もちろん、薬によって副作用が大きいものから、少ないものまであります。

薬とは何らかの化学物質ですので、希望する効果のほかにも、希望しない効果もどうしても出てしまいます。

例えば、痛み止めの薬は痛みを減らしますが、胃潰瘍を起こすことがあります。

このように、原則、すべての薬には副作用があります。

 

しかし、「運動」には、副作用がほとんどありません。

もちろん、これは適度な運動の場合です。

過剰な運動はもちろん体の負担となり、副作用が出てきます。

 

このように「運動」は、「脳」、「精神」、「体」に良い作用を及ぼし、さらに副作用がほとんどないため、「最上の薬」と表現しました。

「運動」の目的と目的に応じたスタイル

「運動」することの目的は、人それぞれです。

  • 単に「運動」が好きな人
  • アスリートのように生活のために「運動」をする人
  • スポーツの試合のために「運動」をする人
  • 学生など、部活の一環で「運動」をする人
  • 健康のために「運動」をする人
  • 頭が良くなるために「運動」をする人
  • 体力をつけるために「運動」をする人
  • ストレス解消のために「運動」をする人
  • ダイエットのために「運動」をする人
  • 異性にもてたいために「運動」をする人
  • 武道など、護身と精神修養をかねて「運動」をする人
  • ボディビルのために「運動」をする人
  • 友達をつくるために「運動」する人
  • 老後のために「運動」をする人。

 このように「運動」する目的はさまざまですが、以下のように大きく5つに分けられます。

そして、目的に応じて「運動」のスタイルが変わってきます。

 

①趣味

これは、「運動すること」自体が目的です。

「テニスが好き」、「ゴルフが好き」、「走るのが好き」、などです。

「運動」をすること自体が目的ですから、運動のスタイルもその人次第でしょう。

 

②生活する手段

プロのアスリートや、ジムのインストラクターなどです。

「運動」を1つの技能とし、収入を得ることで生活しています。

必然的に、運動強度は高く、そして、頻度も高くなるでしょう。

高負荷の運動になるため、ケガなどを起こす可能性が高くなります。

 

③健康を増進

最も多くの方の目的がこれだと思います。

健康のために「運動」をするのですから、あまり強度の高い運動は不向きです。

また、長期間の有酸素運動なども不要でしょう。

健康のために運動をするのですから、安全に、長い期間にわたり継続して運動することが重要です。

 

④コミュニティに所属する

意外に多いのが、この「コミュニティに所属すため」でしょう。

例えば、職場のボーリング大会やゴルフ大会などはこれに当たります。

学生の部活もそうです。

1つのコミュニティという社会に所属する一員として運動する、ということです。

目的には「所属する」ことですので、「運動」はあまり強度が高くないでしょう。

 

⑤脳や体の機能向上

運動が「脳の機能を向上する」というと、意外に思う方が多いでしょう。

ですが、続々と「運動と脳」の関連についての報告が出てきており、「運動することにより脳が活性化する」ことは間違いない事実です。

アメリカなどでは、運動により生徒の学力が上昇することが報告されており、現在、一大ムーブメントとなっています。

ほかの例として、空手、柔道、剣道、合気道などの武道が、「脳や身体の機能を向上させる」、ということであれば、違和感はないでしょう。

これらの武道は、肉体のほか、精神の修養も兼ねているのはご存じのとおりです。

「脳と体」のため、「精神と肉体」のためですから、運動強度はある程度高い必要があるでしょう。

有酸素運動と無酸素運動

有酸素運動と無酸素運動についてです。

有酸素運動は文字通り、主に酸素を使う代謝をすることによりエネルギーを得て運動をすることです。

無酸素運動は、主に酸素を使わずに代謝をしてエネルギーを得て運動することです。 

 

ATPというものがあります。ATP(アデノシン三リン酸)が、ADP(アデノシン二リン酸)とP(リン酸)に分解される時にエネルギーが発生し、これによって筋肉を動かしています。

重要なことは、このATPはわずかしか備蓄されていないことです。

運動するとすぐに無くなってしまうため、何らかの方法でADPを再びATPに戻して補充しない限り、運動を続けることはできません。

 

ATPに戻す方法には、①ATP-PCr系、②解糖系、③有酸素系の3種類があります。

①ATP-PCr系と②解糖系が酸素を使用しない無酸素系で、③有酸素系は文字通り、酸素を使用します。

 

①ATP-PCr系

筋肉には、ATPのほかにPCr(クレアチンリン酸)という物質があります。

 そしてこのPCr(クレアチンリン酸)が、Cr(クレアチン)とP(リン酸)に分解する時にエネルギーが生じ、このエネルギーを用いてADPからATPが生成されます。

最も反応が速いのですが、筋肉内のPCr(クレアチンリン酸)はあまり多くはないため、ATP-PCr系は短い時間しかたず、約10秒間しか持たないといわれています。

 

②解糖系

筋肉にあるグルコールをピルビン酸まで分解する際に生じるエネルギーを用いて、ADPからATPを生成する方法です。

グルコース1分子あたり4分子のATPが生成されますが2分子のATPが消費されるため、差し引き2分子のATPが生成されます。

解糖系も長い時間は持たず、30-40秒(場合により1~2分)くらいしか持ちません。

長い時間持たないのでは良くないような気がしますが、解糖系は、効率の良いクエン酸回路の約100 倍の速度でATPを生成することができます。

 

③有酸素系

解糖系や、脂肪酸のβ酸化によって生成されるアセチルCoAを、筋肉の細胞にあるミトコンドリアでクエン酸回路という巧妙な代謝機構を用いることによりエネルギーを産生し、ADPからATPを生成する方法です。

たくさんのATPを発生させることができる反面、代謝が複雑なため最も時間がかかってしまいます。

しかし、酸素や糖質、脂質が十分であれば長時間エネルギーを産生することができます。

野生動物から学ぶこと

人類は他の動物と比較し、遅筋と速筋のバランスが良いようです。

バランスが良い反面、速筋が優れている動物には、人類は瞬発力では勝てません。

また、遅筋が優れている動物には、人類は持久力では勝てません。

 

一般に野生動物は、その動物が生活している環境で有利になるように進化します。

そう進化しなければ、その種は絶滅します。

ですから、速筋が優れている動物も、遅筋が優れている動物も、それぞれの環境に適応した結果だということです。

そして、ここが大切ですが、進化の結果である「特質」を活かすことが、これからの生存に有利になります。

つまり、将来、生き残りやすいということです。

 

速筋が優れている動物は、速筋に磨きをかける。

遅筋が優れている動物は、遅筋に磨きをかける。

 

これが生き残る術です。

対して人類の筋肉は、バランスがとれているタイプです。

ですから、速筋を鍛える運動、つまり「筋力トレーニング」と、遅筋を鍛える運動、つまり「有酸素運動」をバランスよくしていくことが望ましいということになります。

「筋力トレーニング」や「有酸素運動」のどちらかに片寄るのではなく、両方する。

これが、野生動物から学ぶ結論です。

「運動」の身体に対する効果

それでは、「運動」の「身体」に対する効果についてです。

これは既にご存知の方が多いと思いますので、要点のみご説明します。

  1. 心臓・血管系の機能を向上する
  2. 糖尿病のインスリン抵抗性を改善する
  3. 体脂肪が減少し、肥満が解消される
  4. 免疫が活性化する
  5. 骨や筋肉などの筋骨格系が強くなる

などです。

 

もちろん、これらの他にも「運動」にはたくさんの有益は効果があります。

具体的には、「脳」「精神」に有効です。

 

それぞれのページで、「運動」の詳細をご紹介します。