🟢慢性疼痛とは? 痛みが長引く原因・仕組み・治療について
札幌市北区のエメラルド整形外科疼痛クリニック|整形外科専門医が解説
「腰痛が何か月も続いている」
「検査を受けても、痛みの原因がはっきりしない」
「薬を飲んでいるのに、なかなか痛みが改善しない」
このような長引く痛みでお困りの方も少なくありません。
痛みは本来、身体の異常や危険を知らせるための大切な仕組みです。
しかし、痛みが長期間続くと、身体の損傷や炎症だけでは説明できない、さまざまな要因が関係することがあります。
慢性疼痛の診療では、骨や関節、筋肉、神経などの状態を調べるだけでなく、神経系による痛みの調節、身体活動、睡眠、ストレス、生活環境なども考慮することが重要です。
このページでは、慢性疼痛の基本的な考え方、痛みが長引く仕組み、診断と治療について、整形外科専門医の立場から解説します。
慢性疼痛とは
慢性疼痛(慢性痛)とは、一般に3か月を超えて持続または反復する痛みを指します。
例えば、腰痛や肩の痛み、膝の痛みなどが長期間続いている場合、慢性疼痛に該当することがあります。
ただし、3か月を超えた痛みがすべて同じ病態というわけではありません。
関節の変形や炎症、神経の障害など、痛みの原因となる疾患が持続している場合もあれば、痛みを感じる神経系の働きの変化が関係している場合もあります。
また、複数の要因が同時に関与することもあります。
そのため、慢性疼痛では、痛みの持続期間だけでなく、原因となる疾患、痛みの性質、身体機能、日常生活への影響などを総合的に評価する必要があります。
痛みはなぜ必要なのでしょうか?
痛みには、身体を守る重要な役割があります。
例えば、熱いものに触れたときに手を引っ込める、足を捻挫したときに患部をかばう、といった反応は、痛みが危険を知らせるために起こります。
痛みを感じることができなければ、身体の損傷に気づかず、重大な外傷につながる可能性があります。
一方、痛みが長く続くと、当初の警告としての役割を超えて、日常生活や睡眠、仕事、社会活動などに大きな影響を及ぼす場合があります。
このような慢性疼痛では、単に痛みを一時的に抑えるだけでなく、痛みが持続する仕組みを理解することが重要です。
痛みは身体だけでなく、脳とも関係しています
痛みは、単に身体の一部分から脳へ信号が伝わるだけの現象ではありません。
身体からの情報は、末梢神経や脊髄を通って脳へ伝わり、脳で処理されることによって痛みとして経験されます。
また、脳から脊髄へ働きかけ、痛みの信号の伝達を調節する仕組みもあります。
これを下行性疼痛調節系と呼びます。
こうした痛みの調節には、さまざまな神経伝達物質や神経回路が関与しています。
そのため、痛みの感じ方は、身体の損傷の程度だけで一律に決まるものではありません。
MRIなどの画像所見と痛みの強さは、必ずしも一致しません
MRIやレントゲン検査は、痛みの原因となる病気を調べるための重要な検査です。
しかし、画像で変性や構造的な異常が確認されても、必ずしも強い痛みが生じるとは限りません。
反対に、画像上の異常が比較的軽度でも、強い痛みを経験する場合があります。
これは、画像検査が不要という意味ではありません。画像所見だけで痛みのすべてを説明することは難しいため、問診、身体診察、神経学的所見などと組み合わせて評価する必要があるということです。
慢性疼痛に関係する3つの痛みの仕組み
現在、痛みは主な仕組みによって、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛の3つに分類されます。
1.侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛は、身体の組織の損傷や炎症などにより、侵害受容器が活性化して生じる痛みです。
例えば、関節の炎症、外傷、筋肉や腱などの組織に生じる痛みが含まれます。
慢性疼痛であっても、こうした組織の異常が痛みの原因として持続している場合があります。
2.神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって生じる痛みです。
焼けるような痛み、電気が走るような痛み、ピリピリした痛み、触れただけでも痛いと感じる症状などがみられることがあります。
ただし、痛みの表現だけで診断できるわけではなく、症状の分布や神経学的所見などを確認する必要があります。
3.痛覚変調性疼痛
痛覚変調性疼痛は、組織の損傷や体性感覚神経系の病変だけでは十分に説明できない、痛みの処理・調節の変化によって生じる痛みです。
近年、慢性疼痛を理解するうえで重要な概念となっています。
例えば、明確な組織損傷が確認できないにもかかわらず、広い範囲に痛みが続く場合などに、関与が検討されます。
ただし、検査で異常が見つからないことだけを理由に、痛覚変調性疼痛と診断することはできません。
実際の慢性疼痛では、これら3つの仕組みが重なっていることもあります。
中枢性感作とは? 痛みに敏感になる仕組み
慢性疼痛の一部では、中枢性感作(Central Sensitization)と呼ばれる現象が関係することがあります。
中枢性感作とは、中枢神経系の痛みに関係する神経活動の反応性が高まり、通常よりも痛みを感じやすくなる現象です。
例えば、通常なら強い痛みを生じない刺激でも痛みを感じたり、同じ刺激でも以前より強く痛みを感じたりすることがあります。
ただし、慢性疼痛のすべてが中枢性感作によって生じるわけではありません。
また、一般的な画像検査だけで中枢性感作の有無を直接判定することはできません。
痛みの経過や性質、身体所見などを踏まえ、総合的に考える必要があります。
慢性疼痛と生物心理社会モデル
慢性疼痛の診療では、生物心理社会モデルという考え方が重要です。
これは、痛みを次の3つの側面から総合的に理解する考え方です。
生物学的要因
骨、関節、筋肉、神経などの病気や損傷、炎症、身体機能の低下などです。
心理的要因
不安、ストレス、痛みに対する考え方、睡眠状態などです。
社会的要因
仕事、家庭、生活環境、社会活動などです。
これらの要因は、それぞれ独立しているわけではなく、互いに影響し合うことがあります。
例えば、痛みによって睡眠が妨げられ、疲労が強くなり、身体活動が減少することで、さらに日常生活が制限される場合があります。
重要なのは、心理的・社会的要因が関係することと、痛みが気のせいであることは、まったく異なるという点です。
慢性疼痛は本人が実際に経験している痛みであり、その原因や影響を幅広く評価することが大切です。
慢性疼痛と自律神経の関係
自律神経は、心拍、呼吸、血圧、消化など、身体のさまざまな機能の調節に関係しています。
慢性疼痛では、睡眠やストレス反応、自律神経活動などとの関連が研究されています。
また、痛みそのものがストレス反応や睡眠の変化を引き起こす場合もあり、その関係は一方向ではありません。
自律神経活動の評価に用いられる指標の一つに、心拍変動(HRV)があります。
HRVは心拍間隔の変動を分析する方法ですが、HRVの数値だけで慢性疼痛の原因を特定したり、痛みの強さを正確に測定したりすることはできません。
クリニックは、痛みと身体の生理的反応の関係についても関心を持ち、心拍変動バイオフィードバックなどのアプローチを紹介しています。
慢性疼痛の診断で大切なこと
慢性疼痛の診療では、まず治療が必要な疾患や神経障害などを見逃さないことが重要です。
そのため、痛みの部位、発症時期、経過、痛みの性質、しびれや筋力低下の有無、生活への影響などを確認します。
必要に応じて、画像検査などを組み合わせて評価します。
また、慢性疼痛では、痛みの強さだけでなく、日常生活や睡眠、仕事、身体活動などへの影響も重要な評価項目です。
痛みが強いことと、画像上の異常が大きいことは、必ずしも同じではありません。
患者さんがどのような痛みを経験し、何に困っているのかを把握することが、適切な診療につながります。
慢性疼痛の治療方法
慢性疼痛にはさまざまな原因や病態があるため、すべての患者さんに共通する一つの治療方法があるわけではありません。
原因となる疾患の治療を基本に、必要に応じて複数の治療方法を組み合わせます。
薬物療法
薬物療法では、痛みの仕組みや原因疾患に応じて薬剤を選択します。
例えば、炎症に伴う痛みであり侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛では、適した薬剤が異なります。
また、薬剤には副作用や相互作用があるため、年齢、持病、腎機能、肝機能、併用薬なども考慮する必要があります。
運動療法・リハビリテーション
慢性疼痛では、身体機能や活動性を維持・改善することが重要になる場合があります。
痛みを恐れて活動を過度に制限すると、筋力や体力が低下し、日常生活がさらに制限されることがあります。
ただし、痛みがある場合に無理な運動を行えばよいというわけではありません。
原因疾患や身体の状態を評価し、適切な範囲で運動や活動を調整することが大切です。
痛みに関する理解と認知行動的アプローチ
慢性疼痛では、痛みに対する不安や恐怖、活動の回避などが、日常生活の制限に関係することがあります。
痛みの仕組みを理解し、生活の中で実行できる活動や対処方法を少しずつ増やすことが、治療の一部となる場合があります。
認知行動療法などの心理学的アプローチは、慢性疼痛の治療選択肢の一つです。
だだしこれは、痛みが心理的な原因だけで生じているという意味ではありません。
漢方薬による治療
クリニックでは、西洋医学による診断と標準治療を基礎としながら、患者さんの症状や全身状態などに応じて漢方薬を検討する場合があります。
漢方薬は慢性疼痛に対する万能な治療ではなく、疾患や処方によって有効性を裏付ける研究の質や量は異なります。
また、副作用や薬物相互作用もあるため、適切な医学的管理が必要です。
漢方薬の関連サイト
・痛みに対する漢方薬治療の全体像を見る
・東洋医学と漢方薬について詳しく見る
・「証」について詳しく見る
・漢方薬の選び方について詳しく見る
・代表的な漢方薬の詳細を見る
・直漢法®(直観的漢方薬選択法)について詳しく見る
・エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.1について詳しく見る
・エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2について詳しく見る
・漢方薬に使われる生薬について詳しく見る
・漢方薬の副作用について詳しく見る
バイオフィードバック
バイオフィードバックは、心拍や呼吸などの生理的な反応を測定し、その情報を本人に示すことで、身体の反応への気づきや自己調節を促す方法です。
慢性疼痛に対する補助的なアプローチとして研究されており、症状や生活の質の改善に役立つ可能性が検討されています。
ただし、効果には個人差があり、すべての慢性疼痛に有効であると確立しているわけではありません。
クリニックが大切にしている「一人ひとりに応じた痛みの診療」
慢性疼痛の原因や仕組みは、患者さんによって異なります。
同じ腰痛であっても、筋肉や関節、神経などの状態、痛みが続いている期間、睡眠、生活習慣、日常生活への影響は一人ひとり異なります。
エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、整形外科専門医による医学的評価を基礎として、患者さんの病態に応じた診療を大切にしています。
西洋医学と東洋医学、薬物療法と非薬物療法、身体へのアプローチと心理社会的な側面への配慮など、異なる視点を必要に応じて組み合わせることを目指しています。
ただし、すべての治療方法がすべての患者さんに適しているわけではありません。
医学的な適応と安全性を確認しながら、適切な治療を検討することが重要です。
慢性疼痛についてよくある質問
Q.慢性疼痛は治らないのでしょうか?
慢性疼痛であっても、症状や日常生活の機能が改善する可能性はあります。
ただし、改善の程度や経過は原因疾患や病態によって異なります。
痛みの軽減だけでなく、睡眠や身体活動、日常生活の改善を治療目標とする場合もあります。
Q.MRIで異常が見つからなければ、痛みの原因はないのでしょうか?
いいえ、MRIなどの画像検査だけで、痛みのすべてを説明できるわけではありません。
画像所見と症状、身体診察などを総合的に判断することが重要です。
Q.慢性疼痛は自律神経の乱れが原因なのでしょうか?
自律神経活動と慢性疼痛には関連がみられる場合がありますが、すべての慢性疼痛が自律神経の異常によって生じるわけではありません。
原因となる疾患や痛みの仕組みを総合的に評価する必要があります。
Q.慢性疼痛には漢方薬が有効ですか?
漢方薬が治療選択肢となる場合はありますが、すべての慢性疼痛に効果があるわけではありません。
疾患や処方によってエビデンスは異なり、副作用や併用薬にも注意が必要です。
Q.長引く痛みは、我慢していればよいのでしょうか?
長引く痛みの中には、原因となる疾患の評価や治療が必要な場合があります。
特に、進行する筋力低下、排尿・排便障害、発熱を伴う強い痛みなどがある場合は、速やかな医学的評価が必要です。
札幌市北区で慢性疼痛についてお困りの方へ
エメラルド整形外科疼痛クリニックは、札幌市北区・地下鉄南北線麻生駅近くの整形外科クリニックです。
院長の益子竜弥は、整形外科専門医・医学博士として、慢性疼痛や複合性局所疼痛症候群(CRPS)、生物心理社会モデル、バイオフィードバックなどについて学術講演や研究活動を行ってきました。
痛みが長く続いている場合には、原因となる疾患を適切に評価し、患者さんの状態に応じた治療方針を考えることが重要です。
痛みの診療全体については、痛みの診療をご覧ください。
エメラルド整形外科疼痛クリニック
院長 益子竜弥(医学博士・整形外科専門医)
所在地:札幌市北区北40条西4丁目1階 ASABU LAND
電話:011-738-0011
エメラルド整形外科疼痛クリニック
札幌市北区で麻生駅に近接し、痛みに対して積極的に治療を施行(電話:011-738-0011)
・治療方針:「両極の治療」
・治療方針の解説:全国初の試みである『モデル症例報告』を通じて、わかりやすく詳細に解説
・特徴:多彩な独自の治療法(漢方薬、バイオフィードバックなど)
・リハビリテーション:理学療法士は担当制で、2単位40分で実施
・骨粗鬆症:『骨粗鬆症打開プロジェクト』を展開するなど、積極的に治療
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