10年ぶりの改訂
2025年8月に、実に10年ぶりに骨粗鬆症ガイドライン(正確には、骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン)が改訂されました。
前回と比較し、評価できる部分もありますが、あまり評価できない部分もあります。
薬物治療について
この10年間の間に、ロモソズマブ(イベニティ®)、ゾロドレン酸(リクラスト®)、アバロパラチド(オスタバロ®)など、新しい骨粗鬆症薬が次々に使用可能となり、それらの有効性が骨粗鬆症ガイドライン2025年版では評価されています。
残念ながら、誤解を招く内容となっている
しかし、残念なことに、薬物の効果に対する評価がかなりわかりづらく、骨粗鬆症についてあまり詳しくない医師や一般の方は、ガイドラインを一読しただけでは、内容を誤解してしまう可能性があります。
具体的には、薬による骨折抑制効果は「処方を推奨する」、「処方を提案する」、「処方しないことを提案する」の3つで評価されていますが、この文言だけでは、「処方を推奨する」も「処方を提案する」も両方とも有効であると考えてしまい、「処方を推奨する」の薬でも、「処方を提案する」薬でも、「どちらでも良い」と思われることが一般的でしょう。
実は、「処方を推奨する」と「処方を提案する」には明白な違いがある
しかしながら、真実は違います。
実は「処方を推奨する」と「処方を提案する」には明白な違いがあります。
具体的には、「処方を推奨する」は、
・椎体
・大腿骨近位部
・非椎体
の全てに骨折抑制効果があることを意味します。
それに対し、「処方を提案する」は、これら3つのうちのどれかで骨折抑制効果がないことを意味します。
つまり、その薬剤はこれら3つのうちのどれかには効かないということであり、たいていの場合は、最も生命の危険性が高い大腿骨近位部に対する効果がありません。
3つの骨折すべてに抑制効果がある薬剤が望ましい
ある程度若い年齢である40代~50代の方であっても、軽微な外傷で大腿骨近位部骨折を起こすことがあり、実際にクリニックでも治療経験があります。
そのため、骨粗鬆症の治療をするのであれば、骨密度上昇効果は当然として、椎体・大腿骨近位部・非椎体の3つの骨折全てに抑制効果がある薬剤が望ましいと考えることは、至極当然です。
わかりやすい表を作成
前回のガイドライン2015年版では、これら3つの骨折に対する骨折抑制効果が明記されていましたが、ガイドライン2025年版では、前述のようにわかりづらくなってしまいました。
そのため、多くの方がわかりやすく、誤解を招かないようにするために、ガイドライン2025年版の内容をわかりやすい表にまとめてみました。

ガイドライン2025年版の結果から導き出されたお勧めの薬5種類
この表の骨折抑制効果の部分では、
・「処方を推奨する」は1
・「処方を提案する」は2
・「処方しないことを提案する」は3
として表記しています。
つまり、骨折抑制効果については、1の薬剤が望ましいということであり、表中にあり、現在使用可能な骨粗鬆症の薬剤の中では、
・アレンドロン酸
・リセドロン酸
・ゾロドレン酸
・デノスマブ
・ロモソズマブ
の5つしかありません。
ですから、実際に薬剤で骨粗鬆症の治療をするのであれば、これら5種類の薬剤のなかから状況や病態に応じて選択することが適切であると言えます。