体重やBMIは、大雑把であり、良い評価法ではない
体重やBMIは大雑把
医療では、体重やBMI(Body Mass Index)がよく使用されています。
しかし、これらは重さや身長だけで計算するため、重さが筋肉であるのか、脂肪であるのか、水分であるのかを評価していないため、大雑把な評価であり、正確な評価とは到底言えません。
体重やBMIがよく使用される理由
それでは、正確でないとしたら、なぜ、体重やBMIが使用されているのでしょうか?
その理由は、たった1つです。
それが、これらは体重計と身長計だけで測定できるため、簡便で多くの医療機関で測定できるからです。
はっきり言って、これ以上の理由はありません。
体成分分析とは
それでは、体重やBMIよりも優れた体の評価法はあるのでしょうか?
それが、体成分分析です。
体成分とは、筋肉量や体脂肪量、水分量などのことを言いますが、体成分分析では、体重は当然として、筋肉量・体脂肪量・水分量なども測定することが可能です。
さらに、高機能の体成分分析装置では、体全体ではなく、体幹や四肢(右上肢、左上肢、右下肢、左下肢)という部位ごとに正確な評価が可能です。
なぜ、体成分分析が優れているのか?
なぜ、体成分分析は、体重やBMIより優れているのでしょうか?
多くの理由がありますが、まず第一に上げられる理由は、体重やBMIでは、体脂肪率の高い隠れ肥満かどうかがわからないからです。
例えばAという筋肉量の多い方と、Bという体脂肪量が多い方が、身長・体重が同じであるとします。
筋肉量が多いAさんと、体脂肪量が多いBさんでは、見た目は明らかに異なり、体脂肪量の多いBさんは隠れ肥満です。
しかし、BMIは、体重(kg)÷身長(m)2であるので、AさんとBさんのBMIは必ず同じ値になり、隠れ肥満かどうかは、全くわかりません。
しかし、体成分分析であれば、体重だけでなく、筋肉量や体脂肪量が測定できるため、隠れ肥満かどうかは一目瞭然になります。
家庭用の体組成計は、簡易的で精度が劣る
上記のように、体成分分析は、体重やBMIにはない長所を持っています。
しかし、ここで1つの注意点があります。
それは、家電量販店などで販売されている家庭用の体組成計も、体成分分析装置と同様に、全身や各部位の筋肉量や体脂肪量を測定できることを謳っているということです。
しかし、現実的には、これらの家庭用の体組成計はかなり簡易的であり、精度が劣ります。
これに対し、医療機関やスポーツジムに常設されている業務用で大型の体成分分析装置は、高精度であることに加えて、各種の測定が可能であり、体について有用な情報を得ることができます。
InBodyについて
業務用で大型の体成分分析装置の1つにInBodyがあります。
InBodyの特徴を、ご紹介します。
精度が高い
前述のように家庭用の体組成計でも、体全体だけでなく、各部分の筋肉量や体脂肪量を測定することはできます。
しかし、測定方法が大きく異なります。
業務用で大型の体成分分析装置の中でもInBodyは、5~3000kHzの多周波数を用いて、長さと断面積の異なる右腕・左腕・体幹・右脚・左脚を分けて直接測定するDSA-BIA (Direct Segmental Multi-frequency Bioelectrical Impedance Analysis) 技術に加え、SMFIM (Simultaneous Multi-frequency Impedance Measurement) 技術を使用することにより、短時間で精度の高い測定が可能となっています。
様々な計測が可能
InBodyは、筋肉量や体脂肪量に加えて、様々な計測が可能です。
具体的には、
・体型の評価:8種類の体型のどれに該当するかを評価
・部位別の筋肉量:体幹、四肢(右上肢、左上肢、右下肢、左下肢)の筋肉量が、体重と比較して十分かどうかを評価
・適正な体重・筋肉量・脂肪量を評価
・上半身・下半身・上下の筋肉量の均衡を解析
・部位別の体脂肪量を測定
・体水分均衡の解析:体水分均衡は、体水分量に対する細胞外水分量の割合で、体の水分均衡を表し、浮腫を伴う疾患(腎不全、心不全、肝硬変、糖尿病など)や加齢・サルコペニアなどではは高くなるため、浮腫だけでなく栄養状態や疾患の重症度を示す指標として広く使用されます。
なお、体水分均衡の値は、0.360~0.400が正常であり、0.400を超えると、浮腫(体液過剰)による筋肉の過水和(over hydration)あるいは加齢・栄養悪化による筋肉の質の低下を意味します
(Andrew D et al. Is extracellular volume expansion of peritoneal dialysis patients associated with greater urine output? Blood Purif. 32(3):226-31, 2011)
・骨格筋指数:骨格筋指数(SMI: Skeletal Muscle Mass Index)は、四肢骨格筋量(kg)÷身長(m) 2で計算され、サルコペニア(筋肉減少症)の診断に使用されます
なお、SMIが男性で7.0未満、女性で5.7未満でサルコペニアの診断となります。
(Chen LK et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc 21(3):300-307, 2020.)
・位相角:筋肉の質と健康度と関連するため、生命予後や重症度として活用されます
医療機器であり、健康保険が使用可能
InBodyには各種の製品がありますが、エメラルド整形外科疼痛クリニックに導入されたInBody970Sは管理医療機器・特定計量器対応として承認されているため、健康保険で算定が可能です。
なお、InBody970Sは最新機種であり、道内には初導入となります。
多くの英語論文で使用されている
InBodyは、高い精度と再現性から、世界110か国以上の医療施設や大学・企業で使用されており、数千編の国際英語論文で有効性が報告されています。

InBody 970S

InBody 970Sでの解析結果(一例)
体成分分析の活用法
リハビリテーションに有用
〇体のウイークポイントを明らかにすることが可能
●体幹・四肢で、筋肉量が特に低下している部位や不均衡の解析が可能
●体幹・四肢の重さが、筋肉ではなく脂肪や水分由来かどうかの解析が可能
●筋肉の質が、良好か低下しているかの解析が可能
〇ウイークポイントの情報を活かしたリハビリテーションを行うことが可能
●低下している筋肉に対し、有効なリハビリテーションを重点的に行う
●不均衡を改善するリハビリテーションを行う
骨粗鬆症
骨粗鬆症は生活習慣病であるため、骨粗鬆症と診断された場合には、骨が脆くなり骨折しやすくなっているだけではなく、サルコペニアといって筋肉量が低下していたり、血管年齢が高くなっている可能性があります。
そのため、骨密度検査(骨の強さを測定)に加え、ご希望された方には、InBodyで、全体および体幹・四肢の筋肉量・体脂肪量を測定するだけでなく、体水分均衡・骨格筋指数によるサルコペニアの評価、位相角などを解析し、治療に役立てることが可能です。
健康保険と自由診療
前述のように、InBodyの中でも、管理医療機器・特定計量器対応の承認を受けているものは、状況によっては、健康保険で算定が可能です。
具体的には、リハビリテーションのために測定する場合には健康保険で算定が可能です。
生活習慣病のために測定を希望する場合、健康診断として希望する場合、健常状態の評価のために希望する場合には、健康保険では算定はできず、自由診療(1回1000円)での算定となりますので、あらかじめご了承ください。
筋肉量・体脂肪量の測定をご希望の方
筋肉量・体脂肪量・水分量などの体成分の測定をご希望の方は、受付あるいは院長にお伝えください。
解析結果について
InBodyの解析結果には、ある程度の専門知識が必要となりますので、質問などは院長に直接聞いてください。