イミペネム・シラスタチン(チエナム®)という、非常に強力な抗生物質が水に溶けずらい性質を利用して、動注(動脈注射)することにより、モヤモヤ血管を塞栓(つまり、動脈を詰まらせる)ことによりヘバーデン結節が良くなる、という自由診療を行っている医療機関が、日本各地(札幌を含めて)存在します。
この治療が、適切であるのか有効であるのかについては、あえて言及しません。
しかし、前述のように、へバーデン結節に対する漢方薬による治療は、
・医学雑誌(ほぼ教科書)で有効性が紹介されている
・有効率は、96.3%と極めて高い
・保険適応であり、安価
であるため、まずは漢方薬による治療を試みることが肝要だと考えますが、いかがでしょうか?
また、イミペネム・シラスタチン(チエナム®)は、添付文章に、
・「VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目」として、「5. 重要な基本的注意とその理由」の中で、「8.2. 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」
・[V. 治療に関する項目]として、「2. 効能又は効果に関する注意」の中で、「「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で、本剤の投与が適切と判断される場合に投与すること。」
と記載されています。
現在、日本のみならず世界中で抗生物質の乱用による耐性菌の蔓延が発生し、医療の中でも最も重大な問題の1つとなっています。
グリコペプチド系抗菌薬(バンコマイシン®)と並んで最も重要な抗生物質の1つであるイミペネム・シラスタチン(チエナム®)は、感染症のなかでも重篤な状態の患者様に限定して使用することが日本のみならず世界中で推奨されており、乱用され耐性菌が蔓延する事態となった場合、有効な抗生剤が世界中に存在しなくなるという極めて危機的な状態となるため適正に使用することが厳に求められている薬剤です。
そのような人類にとって貴重な抗生物質を、あろうことか感染症でもない変形性関節症であるへバーデン結節に使用することは、自由診療とはいえ、強い違和感がありますが、いかがでしょうか?
参考までに、イミペネム・シラスタチン(チエナム®)の添付文章を下に添付します。
よろしければ、ご参照ください。
自由診療でチエナム®を使用することに対する懸念
