股関節痛を呈する疾患:成人と小児

股関節痛を呈する疾患:①成人

股関節は最も大きい関節であり、股関節が損傷すると歩行などに重大な支障が生じます。
ほかの関節と同じく、股関節も年齢などの影響により変形性股関節症となりますが、日本人の場合は、臼蓋形成不全と言って、股関節の寛骨臼が成長の過程で十分形成されないために、年月が経過したのちに変形性関節症となる方が多いです。
なお、この臼蓋形成不全からの変形性関節症は女性に多いです。

そのほかには、先天性股関節脱臼(現在は、発育性股関節形成不全という名称に変更されています)も、将来的に変形性股関節症となることがありますが、股関節検診や治療法の変化により、以前と比べかなり頻度が減っております。
ほかには、股関節のケガや感染による変形性股関節症がありますが、頻度は少ないです。

股関節痛を呈する疾患:②小児

小児の股関節痛の原因となる疾患には、ケガのほか、単純性股関節炎、化膿性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症などがあります。

単純性股関節炎

小児の股関節痛で、けが以外で最も頻度が多いものは、単純性股関節炎です。
これは、10歳以下、特に5~6歳の小児に原因もなく突然、股関節痛が発生するもので、通常は痛み止めなどの処方で短期間で治ります。

化膿性股関節炎

しかし、同様の年齢の小児に、稀に化膿性股関節炎が発症することがあります。
化膿性股関節は重篤な疾患で、関節穿刺や抗生剤の点滴などの治療が必要で、通常は入院しながらの治療になります。

化膿性股関節炎は診断に苦慮する

日常臨床においては、後述するペルテス病と大腿骨頭すべり症は、レントゲンやMRIなどの画像診断で判断できるため判断に悩むことは少ないのですが、単純性股関節炎と化膿性股関節炎は初期にはレントゲンやMRIで区別することはできないため、診断に苦慮します。

一般的には、単純性股関節炎はあまり痛みはなく、発熱しないことが多いことに対し、化膿性股関節炎は痛みが強く、股関節もほとんど動かしてくれず、熱があり、機嫌がかなり悪いことが目安となります。

採血が可能であれば、単純性股関節炎はCRPが陰性あるいは軽度陽性であることに対し、化膿性股関節炎は陽性であることが多いです。

ペルテス病

ペルテス病は、原因は不明(繰り返しの軽微の外傷が原因とも考えられています)ですが、4 ~10歳の特に男児に、大腿骨頭の骨端部に血行障害が生じる結果、骨の壊死が生じる疾患です。
初期ではレントゲンでは異常が写りませんが、MRIが診断に有用です。

大腿骨頭すべり症

大腿骨頭すべり症は、成長期の小児(男子で平均12.7歳、女子では平均11.2歳)に発生し、大腿骨骨頭の骨端が後方にすべってしまう比較的稀な疾患です。
診断には、レントゲンが有用で、MRIも有用です。


股関節は実は、保存的治療が効きやすい部位です。
そのため、エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、股関節の痛みに対し、漢方薬や西洋の疼痛薬、運動器リハビリテーションなどで積極的に治療を行っています。

整形外科専門医による「股関節の痛み」におすすめの4つの漢方薬による治療