整形外科専門医による「肩こり」におすすめの6つの漢方薬による治療

整形外科専門医による「肩こり」におすすめの6つの漢方薬による治療

肩こりについて

肩こりは、最も頻度の高い疾患

肩こりにお困りの方はかなり多いです。
厚生労働省による「平成28年 国民生活基礎調査の概況」でも、肩こりは男性で2位、女性で1位と、腰痛と並んで最も頻度の高い疾患で、いわゆる国民病です。

肩こりの原因・診断・治療法・治療アルゴリズムなどについては、【肩こりに対する診断・治療アルゴリズム】をご参照ください。

厚生労働省からの肩こりのデータ

(出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」)

肩こりは治療対象疾患です

「肩こりなんか病院に受診して良いのかしら?」と考えている方がおられます。
結論から言うと、「肩こりは立派な病気なので、もちろん病院を受診してOK!」です。
むしろ肩こりはキチンと治療をすれば良くなる可能性が高いので、ぜひ、医療機関への受診を勧めます。

肩こりに対する一般的な治療法

肩こりに対して一般的に行われている治療法は、内服薬や低周波やリハビリテーションです。
肩こりの症状が軽い方にはこれらの治療で十分なことが多いですが、ある程度症状が強い場合、これらではあまり改善しないことがあります

そのため、中程度~重度の肩こりの方には、漢方薬をおすすめしています。

肩こりの治療に漢方薬をすすめる理由

肩こりの治療に漢方薬を勧める理由は、「肩こりに漢方薬がよく効くから」です。
整形外科専門医である院長が開発したエメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2の結果から、肩こりに対する6種類の漢方薬による治療の有効率は86.0%と非常に良好な治療成績であることが報告されています。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)

また、6種類の漢方薬は、
「かなりの虚証」から「かなりの実証」まで対応可能
表証、裏証、寒証、水毒、瘀血と5つの証に対応可能
と、多種多様な病態に対応可能な多様性のある漢方薬であることが特徴です。

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬

肩こりにおすすめの6つの漢方薬

最もおすすめの漢方薬は、葛根加朮附湯

めの漢方薬 葛根湯朮附湯

肩こりに最もおすすめする漢方薬は、葛根湯朮附湯です。
有効率は71.4%です。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)

葛根湯という名前を聞いたことがある方は多いと思いますが、葛根加朮附湯という名前をご存じの方はきわめて稀だと思います。
「葛根」という生薬は肩こりに良く効く生薬で、この葛根が入った「実証」用の漢方薬が葛根湯で、「虚証」用の漢方薬が葛根加朮附湯です。

東洋医学・漢方薬では「証(西洋医学でいう病名のようなもの)」で心身の状態を表現しますが、「実証」元気な状態「虚証」元気でない状態を意味します。
つまり、肩こりがあって元気な方は葛根湯がよく、肩こりがあって元気がない方には葛根加朮附湯が良いということになります。

肩こりの方はどちらかというと「元気ではない方」が多いため、たエメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2による解析の結果では、葛根加朮附湯が第1位となっています。

なお、葛根湯朮附湯には、麻黄という生薬が入っています。
麻黄には、エフェドリンという成分が入っており、これは、交感神経を興奮させる作用があり、結果として、血圧上昇、動悸、頻脈を起きる可能性があります。
そのため、心疾患がある方は、葛根湯朮附湯は控えた方がよいです。

2番目におすすめの漢方薬は、治打撲一方

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬 治打撲一方

肩こりに2番目におすすめする漢方薬は、治打撲一方です。
有効率は74.5%です。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)


治打撲一方は、文字通り「打撲を治療するための方剤」で、ケガや打撲に良く効きます。
肩こりは僧帽筋のダメージが主な原因ですので、治打撲一方が効きます。

治打撲一方は、「虚証」から「実証」まで使用することができるため、「かなりの虚証」でなければ使用可能です。

なお、治打撲一方には大黄という生薬が入っているため、下痢をすることがあります。治打撲一方を内服して下痢をする場合には、飲む回数を1日1~2回に減らしたり、別の漢方薬に変更することが望ましいです。

3番目におすすめの漢方薬は、葛根湯

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬 葛根湯

肩こりに3番目におすすめする漢方薬は、葛根湯です。
有効率は76.4%です。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)

前述のように葛根湯には「葛根」が入っているため肩こりに有効です。
しかし、「実証」の漢方薬ですので、元気がよい方にしか使ってはいけません
そのため、葛根湯は、3番目におすすめとしました。

葛根湯にも、麻黄が入っています。
そのため、心疾患がある方は、葛根湯は控えた方がよいです。

4番目におすすめの漢方薬は、二朮湯

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬 二朮湯

肩こりに4番目におすすめする漢方薬は、二朮湯です。
有効率は63.6%です。


(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)


二朮湯は肩関節疾患の特効薬ですが、意外に肩こりや腰痛などにも有効です。
「かなりの虚証」から「かなりの実証」まで多くの方に使うことができることが大きな特徴です。
また、副作用の頻度も少ないため、重宝する漢方薬です。

5番目におすすめの漢方薬は、芍薬甘草湯

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬 芍薬甘草湯

肩こりに5番目におすすめする漢方薬は、芍薬甘草湯です。
有効率は47.3%と、ほかの漢方薬より有効率は落ちます。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)

芍薬甘草湯は、「こむら返り」に効くという話を聞いたことがある方や、実際に飲んだことがある方が多いと思います。
このように芍薬甘草湯は筋肉の痙攣による痛みに有効なため、僧帽筋の症状である肩こりに有効です。

ただし、芍薬甘草湯は文字通り芍薬と甘草という生薬からできており、甘草の量が最も多い漢方薬です。
そのため、「偽性アルドステロン症」という副作用を最も起こしやすい漢方薬ですので60代以上の方は注意が必要です。
エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、60代以上の方に対しては芍薬甘草湯は頓服とし、場合により芍薬甘草湯と似たような漢方薬である桂枝加芍薬湯を処方しています。

6番目におすすめの漢方薬は、呉茱萸湯

整形外科専門医による肩こりにおすすめの漢方薬 呉茱萸湯

肩こりに6番目におすすめする漢方薬は、呉茱萸湯です。
有効率は60.0%です。

(出典:益子竜弥. 古典的漢方医学概念に依らない漢方薬の運用2:エメラルド式革新的漢方薬選択法Ver.2 関節外科、44巻、p272-280、2025)

呉茱萸湯は片頭痛に効くことで知られている漢方薬ですが、肩こりにも有効です。
しかしながら、1位から3位までの漢方薬が何しろ良く効きますので、まずはこれらを使用し、それでも良くならない場合に試してみることをおすすめします。

まとめ

整形外科専門医による「肩こり」におすすめの6つの漢方薬による治療
①葛根加朮附湯
②治打撲一方
③葛根湯
二朮湯
⑤芍薬甘草湯
呉茱萸湯湯


エメラルド整形外科疼痛クリニック

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・カルシウム神話の誤り:カルシウムを多く摂取しても骨折する
・骨粗鬆症のに対する適切な食事
・骨粗鬆症に対する適切な運動
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などについて記載していますので、骨粗鬆症の方にも、骨粗鬆症でない方にも大いに参考になる書籍と自負しています。